2012 04 12

私が香りにこだわる理由

(今日はちょっと長いです。)

かなりゆるやかなペースではありますが、
アトリエミショーの活動を始めてから、一年ほど経ちました。

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↑ グラースで滞在していたシャンブルドット(民宿)からの眺め。ここがすべての始まり。

この一年間は、公私ともに新しい出会いが多く、
「何のお仕事されてるんですか?」と
聞かれることがしょっちゅうありました。

そのたびに、何とか自分なりに答えようと、
いつも大変な苦労をしていたように思います。

花を売るなら花屋、香りを教えるのはアロマの先生と、
通常職業には名前がついています。
それが、私の場合はない。

職業はおろか、ミショーの活動さえも
作ってるのか、売ってるのか、教えてるのか、つないでるのか、
説明のしようがない。

雲をつかむような私の話に、わかるようなわからないような反応の
やり取りを、相当な回数繰り返してきました。
「わかりにくいことにこそ本質がある」と、励まして下さる方も。

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↑ グラースの歴史書。香料植物を栽培していた当時の様子がうかがえる。

けれど、どうしてこんなに説明が大変なのか、
自分でも不思議になり、考えこんでもみました。

― 何をしているかを 自分でわかっていないのか
― 仕事や職業を語ることに 抵抗があるのか
― 自分の関心が マイナーすぎるのか
― 単純に 説明が下手なだけなのか

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↑ 国際香水博物館内のアンフルラージュ再現展示。

今回、南フランスの小さな町、グラースへ行って、
その謎が少し解けました。

うちの旦那さんは、言葉の世界で生きている人なので、
ある現象や状況を言葉に置き換えることがとても得意で
そのために生きているともいえます。

いよいよ今週末から始まる
flow perfume. flow...」も、彼が名付けの親。

私は言葉が苦手なので、ついダラダラ書いてしまったり、
話がチグハグになって、うまく説明できないことも多い。
だから、言葉できちんと表現できるなんて、素晴らしいなーと思います。

だけれども、世の中には言葉に置き換えられないこともたくさんある。
私はその言葉にできない部分を、
言葉ではない形で伝えたいのかもしれません。

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↑ グラース近くのコーソール高原。野生のラベンダーやタイムなどが見られる。

アンフルラージュを生み出したグラースの町は、
世界的に知られる香りの町。
かつてこの場所では、たくさんの香料植物が栽培され、
数多くの名香が世に送り出されていきました。

さまざまな大人の事情で、その面影は失われつつありますが、
それでも「アンフルラージュ(enfleurage)」を知っている人の割合は、
他の町とは比較できないように思います。
(発音がとっても難しく、なかなか通じないこともありますが…!)

グラースへ向かうまでは、「アンフルラージュ」さえ通じれば、
私は「アンフルラージュを教える人」という職業を得ることができ、
「何をしていますか?」という質問にも
明快に応えられるはず!と、ちょっとワクワクしていました。

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↑ コーソール高原にある、フロリハナ蒸留所の外観。

事実、とても話が通りやすく、驚いてもらえたことも確かでした。
それが「どういうことなのか」よりも「何をどのぐらい使っているのか」など
具体的な技法や材料について話が弾み、ふるさとの味を
地元の人たちと楽しむような幸福感を味わうことができました。

けれど、それで「何をしているのか」に対する答えを
満たせたわけではなかったのです。

私は、香りを集めて販売しているわけではなく、
アンフルラージュの講師を育てているわけでもない。
もちろん、それに近いことをしてはいるんですが、
もっと別の目的と理由があります。

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↑ 行ってビックリ!フロリハナはフランス人×日本人ご夫妻の会社でした!

私はこれまでの経験の中で、常に植物に助けられてきました。

植木屋では、木々のたくましさと優しさを学び、
花屋では、花々の華やかさと明るさに触れ、
香りの事業では、植物が放つ直接的な力を知りました。

私はもともと心身が弱めでしたが、
20代の半ばごろから植物に囲まれた生活を送っているうち、
いつの間にか、自分を「健康」と思えるようになっていました。

それにはいろいろな経過がありますが、
今思えば、香りも深く関係していたように感じています。
私は植物に救われ、育てられたという実感。

その実感こそが、今の活動につながっています。

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↑ グラース市街地にある古書店。

植物に触れることで、人は変わる。

ただ、その触れ方によっては、
逆のベクトルを向いてしまうこともある。

そのことを言葉で伝えるのは難しく、もちろん個人差もあります。
詳しいことは直接植物に触れてみてもらった方が早い!ということで
香りを嗅いだり、食べたりすることを、ミショーを通して提案しています。

いろいろ整理した結果、こんなことを初対面の人に数分で説明するのは
私には不可能だということにも気付きました。

香りそのものもまだ解明されていない点が多く、
説明できない部分を含みもっているからこそ、魅力的でもあります。
私もそれに倣おうかな、という結論(笑)。

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↑ 植物関係はあんまり扱っていないという言葉にめげず、店内を物色。

そんな植物の力を実感している人はたくさんいて、
週末に来て下さる、Masami(マサミ)さんもその一人。

現役バリバリの薬剤師さんでもあるので、植物の香り成分それぞれが
どんな薬理効果をもっているのかという知識にも精通されています。

でもそれよりも何よりも、周りの人たちが植物の香りで
どんどん元気になっている事実こそが、
Masamiさんを動かす原動力になっています。

そして、植物の香りを取り巻く状況は、このところ急激に変わっていて
日本国内でも、医療に取り入れられる機会が増えてきました。
そうなると、ますます香り(精油)の品質が問われてきます。
フランスへの旅では、そういう意味での素晴らしい出会いもありました。

Florihana(フロリハナ)の製品とそれらを生み出す方々です。
香りの濃度が全然違うので、使った時に植物の姿が見える。
Masamiさんのジャスミンオイル制作用に
精油を持ち帰ってきたので、みなさんにもお使いいただけますよ。

ジャスミンの精油は、高価だということよりも
不安な気持ちをやわらげたり、明るくしてくれる効果があります。

香りや使用感だけは、ブログでお伝えできません。
芳香蒸留水や植物オイルなどのサンプルもお持ちしますので、
ご参加の方は、当日ぜひ試してみてくださいね。

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↑ シャンブルドットとフロリハナで見かけた貴重な古書を、奇跡的にダブルで発見!

また、フランスでは精油をお医者さんが処方しますが、
Herboristerie(エルボリストリ)といってハーブを専門に扱う
薬草薬局もあります。

漢方は独特の匂いをもっていますが、
ドライハーブは見た目も素敵で香りもよく、どことなく優雅。
症状に合わせたハーブティーをゆったり味わうことができ、
「薬を飲む」という精神的な負担も軽くなります。

私は現地でぜんそく症状が出ていたので、
気管支の炎症や咳に効くブレンドをお願いしたんですが、
スミレやカモミールなど、7種類のお花とハーブを入れてもらい、
色もかわいく味もおいしくて、大満足でした。

このハーブティーも、実際にご覧いただけます。

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グラース郊外にあるエルボリストリの薬草棚。

それから、今急ピッチで準備しているものがあります。
写真はまだ試作段階ですが、ミショーオリジナルの和綴じノートです。

ご近所で仲良くさせてもらっている、文學堂さん
(=盆栽和片京東都さん)と前々から企画していたものの、
詳細をつめきれず、結局ギリギリになってしまいました。

文學堂さんが作る和綴じノートは、
古くからある綴じ方の面白さに留まらず、
日本が誇る有名作家の手がけた小説の世界観を、
シルクスクリーンによって鮮やかに描き直しています。

内側には、丹念に選び取られた小説の中の一文が印刷された、
シンプルかつ細やかな構成。

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この和綴じノートを、今月よりミショーからも
月ごとに二種類ずつ発行させていただくことになりました。

初年度はシルクスクリーンではなく、TISSUと同じ二柄のプリント。
中の内容と、綴じ糸やしおりヒモの色が毎回変わり、
白地なので、塗り絵にしてカスタマイズもできます。

4月は、以下のテーマ。
同じ柄で、それぞれ12か月間のシリーズになります。

アンフルラージュ柄
・テーマ「ハゴロモジャスミン」
・アンリ・ミショー『プリュームという男』より一文
・香りの12か月「ジャスミン」

植木鉢柄
・テーマ「桜」
・鞍田崇『実生』より一文
・香りの湯「桜湯」

元々は「こんなのがほしー!」という単なる私の希望で
試作を作ってもらっていた、このノート。

それを実際に使っていたところ、
「売ってほしー!」と言って下さる方が意外と多く、
せっかくなら、植物のことが学べる読みものにしようと
月ごとに植物を変えて発行することにしました。

この完成品も、4月15日のレッスン時にお披露目予定。
文學堂さんオリジナルの『失敗園』ももっていきます。

主人の世話の仕方を不満に思った植物同士が、
口々に文句を言い合う、太宰治の超短編小説がモチーフです。
表紙デザインもとってもいい!ので、お楽しみに。

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そして、「flow perfume. flow...」は
会場となる flowing KARASUMA さん
全面的なご協力で成り立っている企画でもあります。

「大人の学び」の VADE MECVM.さんもそうですが、
外の風景や人の動き、光の移ろいが見える場所がとても好きです。
生きた植物と親しんでもらうのには、そういう場所が絶対に似合う。

というわけで、無理をお願いし、大きい窓が並んでいて
光や風がたっぷり入る、入口すぐのスペースが会場になりました。
しかも、11時半の開店より早い10時スタートなので、
シンと静かな気持ちのいい朝を、みなさんとご一緒できます。

徐々にお客さんが入って賑やかになった頃に、
私たちもワイワイとティータイム。
スイーツを味わってほっこりしていただきながら、
グラース報告として、スライドでいろいろご紹介しようと思っています。

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↑ flow perfume. flow...の会場風景。

今回のスイーツに、ジャスミンティーを素材として選んだのには、
実はアンフルラージュとの深いつながりがあり、
La melangee(ラ・メランジェ)さんのジャスミンティーを
指定させてもらったのにもワケがあります。
その辺りは、レッスンの中で詳しくご説明しますね。

さらに、ジャスミンティーの茶葉を使ってスイーツを作ってほしいという
私のワガママにも、flowing パティシエ加藤さんが見事応えて下さり、
スペシャルスイーツも無事完成しました!
担当の平間さんと加藤さんに、心から感謝です!!

いろいろ楽しみな「flow perfume. flow...」ですが、
告知もろくにできずバタバタしているうちに、
もう3日後になってしまったので、まだお席に空きがあります。

後日こちらのブログでもご紹介していきますが、
同じ企画は二度しない(できない)ので、
ご興味おありの方は、この機会にぜひご参加くださいね。

詳細はこちら

最後まで長文お読みいただき、ありがとうございました!
posted by クラタ at 09:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | flow perfume. flow...
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