2011 10 30

「大人の学び」 × 尹煕倉

10/23 「大人の学び」〜アンフルラージュから広がる世界 vol.9

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だんだんと冬が近付いてくる気配。
日射しはやわらぎ、日が高くなる時間も少しずつ遅くなっています。

早くも、秋講座・最終回。
春講座の半分だったこともあってか、
始まってみると本当にあっという間の一ヶ月でした。

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美術家で多摩美術大学准教授の
尹 煕倉(ユン ヒチャン)さんによる「「触れる」を知る」。

まずは、これまでの作品や活動の紹介から。
尹さんは、学生時代から「そこに在るもの」というタイトルで
四角い「陶」の作品を手がけてこられました。

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(以下、尹さんの文章より)

「そこに在るもの」とは、
作品として確かにそこに在りながら、
時に応じて、在ることと、無いことをしなやかに行き来するもの。
観る人の時々の意識に応じて、語りかけ、あるいは黙すること。
そのために空間と同化し、且つ異物として在ること。

普通に在る 飾らないで在る
ありふれて在る 何でもないように在る
ぽつんと在る 在るように在る

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尹さんの作品は「観ること」を強いず、
時に視点からはずれ、時に環境に溶け込み、
「観ること」そのものを鑑賞者に委ねています。

こちらの心が開いている時だけ両者の関係性はつながり、
そうでない時にはひっそりと身を潜める存在。
その寛容さによって、「在る」ことが違和感なく受け入れられる。

とはいえ、外敵から身を隠すために変色する動物や
周囲の風景にまぎれようとする植物とは違い、
自然界にはない「四角」という形だけが唯一
静かに異物であることを語りかけています。

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小さい四角は、「陶」の作品。

そして最近では、選ばれた存在の良質の粘土ではなく、
どこにでもある平凡な土を焼き、砕いたりすったりして
粗さの異なる「陶粉」という素材も自ら作られています。

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化学者のように丁寧に分類分けされた
粗さ、色、採取地の異なる陶粉をみなさんにもご覧いただきました。

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これらの陶粉は、陶粉画という形で
また新たな表現領域を生み出しています。

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にかわを使って筆で描くそうですが、
「描く」というより「重ねる」イメージ。

細かい粒子がくっついたり広がったりしながら、
水の波紋のように無理なく状況に呼応しています。

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京都のかみ添さんで展示された、陶粉画。

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そしていよいよ、触覚ピースの登場です。

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全員アイマスクを装着していただきました。

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表面が5段階の粗さになっている陶板を
目隠しした状態で触り比べ、粗い順に並べていきます。

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目が見える状態で触り比べてもOKですが、
どうしても視覚優位に反応してしまう私たちの身体を
指先だけに集中させて。

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見えていないはずなのに、指先の感触が
つい今しがた目にしたばかりの陶板の記憶を
勝手に辿り、まるで見ているような感覚にも。

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目で触っているのか、指で見ているのか。

陶板を目で見ない状態で始めていたら、指で見たものは
また別の姿をしていたかもしれません。

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最後に、答え合わせ。
喜ぶ方!ガッカリされる方・・・。
反応もいろいろです。

焼成温度の違う別の陶板でも、再度チャレンジ。

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一喜一憂したところで、この試みに対する意義について
谷川俊太郎さんの「感性ってなんだ?」という文章を手がかりに
尹さんが大切なお話をして下さいました。

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「感度」と「感性」の違いとは何か。

感覚を通して答えが導き出される今回のような体験をする時、
私たちはつい正解を目指してしまいそうになります。

けれども重要なのは、より精度の高い「感度」を求めるのではなく、
いかに「感性」を充実させるか。
「感性」をより豊かにすることが、自らの思考や生き方を深め、
いきいきとした感覚を開かせていく。

「感度」を上げる機械的な営みよりも、
より人間らしい「感性」を磨くことが、
新たな発見や喜び、表現を生み出すことにつながるはず。

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では、「感性」を磨くためにできることは何か。

尹さんの個人的な体験としては、
空の写真を撮ることがそれにつながっているそうです。

人それぞれ方法は違えど、好きなことを見つけ、
心が動くこと、身体が反応するものに素直に感動する。
その繰り返しによって、「感性」は磨かれていくというお話に
みなさん聞き入っておられました。

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ここで終わっていいぐらいの内容ですが、
一応、お約束のアンフルラージュも(笑)。

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この日の花びらは、前日に入れ替えたばかりだったので
バラ風呂用にとみなさんに持って帰っていただきました。

無農薬だと、浴用にも食用にも観賞用にも使える。
そう思っただけですがすがしい気分になるのは、
幅が広がるだけでなく、道が開ける気がするからかも。

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微細な触覚は、切り花にも応用できます。
水の上がりにくくなったお花は、ハリが失われ、
花びらや葉がやわらかくなってきます。

そのタイミングをいち早く察知できれば、
茎の切り戻しをしたり、新聞で巻いて一晩深水につけたりして
もと通りの元気な状態に復活させることも。

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アンフルラージュも、花びらが日々変化する様子がわかるので、
新鮮なハリのある状態と、水分を失ったやわらかさの違いや
香りが失われていく過程を目と指と鼻で感じていただけます。

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尹さんにも挑戦していただきました。
やっぱり化学者のような佇まい。

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新しく入れ替えたフジバカマも、お待ちかねです。

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ふたたびTISSUの包み方。
これ、Parfum Cruカードに加える必要アリですね。
包み方は二種類あるので、しばしお待ちを。

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こうして見ると、まるでそこに最初からあったような尹さんの陶粉画。

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ごく自然に、その場の空気に溶け込んでいました。
ご参加いただいたみなさん、本当にありがとうございました!!

そして、140枚もの陶板をこの日のために制作していただき、
遠く東京からお越し下さった尹さん、本当にありがとうございました!!

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今回の企画のきっかけになった絵本『あらしのよるに』と
尹さんの作品を連想させる赤瀬川原平さんの『四角形の歴史』。
11/6までは、書籍コーナーで閲覧していただけます。

尹さんの作品、大阪では
高麗橋吉兆 JR三越伊勢丹店
餅匠しづく 新町店
柳々堂書店
などで常設展示されていて、どなたでもご覧になれます。

今回の講座にご都合合わず来られなかった方、
このブログを読んでご関心をもたれた方は、
一度足を運んでみて下さいね。

また現在、以下の展示に参加されています。

○「新・陶・宣言 ceramic works, 2011」
 9/17(土)-12/25(日)
 豊田市美術館(愛知県豊田市) →詳細

 10/30(日) 14.00-
 アーティストレクチャー 「真・陶・宣言」
 豊田市美術館・講堂

○龍野アートプロジェクト2011
 「刻の記憶 Arts and Memories」
 11/18(金)-11/26(土)
 聚遠亭(兵庫県たつの市)ほか →詳細

 11/20(日) 11.00-/13.30- 事前申込制
 アーティストトーク 「遠くをみる、近くをみる。」
 聚遠亭内

豊田市美術館のトークは本日です。
ギリギリのご紹介になってしまいましたが、
お近くの方はぜひご参加ください。

最後になりましたが、「大人の学び」秋講座、
今回もたくさんの方にご協力・ご参加いただき、
幸せな出会い、楽しい時間の連続でした。

みなさま、本当に本当にありがとうございました!!

続きはまた、次の春。
同じ場所でみなさんにお会いできるのを楽しみにしています!!
(内容はすでに構想中・・・)
posted by クラタ at 04:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 大人の学び
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