2010 05 25

石上純也

今、もっとも注目している建築家。

以前から、彼の話をしっかりと聞いてみたくて、
仕事場でセミナーを企画している旦那さんに持ちかけていました。
幸せなことに念願が叶い、先週の金曜日、そのセミナーに
講師として来ていただけたので、弟を誘ってお邪魔してきました。

venice

「建築の可能性」

ただ真っ白な画面の中心に映し出された、彼らしい小さい文字。
講演会にはほぼ、「自作について」というタイトルで語るスタイルを
取っているようで、今回も例外ではなく、用意された資料を
スライドで見ながら、9つのキーワードを元に話が進められました。

1.プロポーション
2.建築の強度
3.ゆっくりとしたスピード
4.巨大なボリューム
5.大きい環境
6.小ささ
7.部分と全体
8.独立していること
9.建築を考える環境

ここで、具体的な内容や主観的に感じ取ったことを書くのは、
個人的なものになりすぎすので、やめておきます。
彼自身、どこか把握し切れないものを「抽象」という言葉で表現し、
そこから生み出てくる可能性を、特に重視しています。

なので、キーワードからさまざまに想像を膨らませ、
またいつか機会を作って、著書を読んだり、建築を訪れたり、
講演に参加したり、それぞれに感じ取ってみて下さい。

INAX 石上純也
     石上純也(著)・メディア・デザイン研究所(編)
     INAX出版 2008 Amazon

「現代建築家コンセプト・シリーズ」中の一冊です。
こちらでも、デッサンや図面などのいろいろな図版が見られます。

彼の生み出す作品には、植物の登場する場面が多く、
全体を通して優しさにあふれています。
デッサンもすべて、女性が描いたように線が細く、
パステル調で、ファンタジックで、楽しげです。

ここにも、「抽象性」が深く関係している気がします。

建築が、内部と外部をはっきりと分断するものとしてだけ
存在するのではなく、境界線をやわらかくしたり、あいまいにしたり、
刻々と移り変わらせたり、新たな可能性やバランスを探る上で、
彼の建築は、ある意味で女性らしくもあります。

たとえば雲のようにフワフワと漂う「四角いふうせん」や、
ポツンと建てられた小さな家とその塀の間にある庭のような部屋や、
全長10m×厚さ3mmという不思議なテーブルなど、
見た目は大人も子供も喜ぶような、ワクワクするものばかり。

建築物として緻密に計算された構造や、
十分生活できる機能を備えていることを、感じさせません。
あとは、使い手の個性やセンス、努力に委ねられます。

想像力を掻きたてる装置として、ときには見え方を変えさせたり、
ときには気候や地形を変えてみたり、建築物にとどまらない
彼の実験と挑戦は、まだまだ続きます。

table

お話も面白く、あっという間の二時間でしたが、
今回特に、問題意識として頭に残ったのは、街並みのお話です。
ヨーロッパなどでは、いまだに古い街並みが遺っている場所も多く、
それをお手本に日本も保存・保護活動がなされていたりします。

建築家の方ならなおさら、優れた建築物を破壊することなく
後世に引き継ぎたい、と考えるのも自然です。
それは財産として、思い出として、記録として。

けれど彼は、その行為を「化石化」と呼んでいました。
人間や社会が変わっていくのだから、建築や街並みも同じように
変わっていった方が、むしろ自然でリアリティを持っていると。

建築界に属する人が、しかも実績があるとはいえ、
まだ若手の人が、はっきりこう断言していたのは衝撃でした。

安易な建築のために、優れた建築を壊すのはつらいことです。
ただ、文化や街を更新していくのも、とても重要なこと。
街並みを保存するために、看板の色や建物の高さを制限する
京都に住んでいる私としても、少し立ち止まって考えたい問題です。
posted by クラタ at 19:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 植物の建築
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