2010 02 08

淡路島北淡町のハクモクレン

MERRY PROJECTで阪神淡路大震災の話題が出たこともあり、
イズミさんからいただいたコメントの「ズレ」というお話にもつながる、
福田美蘭(みらん)さんの作品を少しご紹介したいと思います。

彼女は、のぼっちゃうでも登場した著名なグラフィックデザイナー
福田繁雄さんのお嬢さんで、80年代からすでに活躍されています。

私が初めて彼女の作品を生で見たのは、
2004年に描かれた、「淡路島北淡町のハクモクレン」。
ちょっと感動的でした。

淡路島北淡町のハクモクレン

言わずもがな、震災時の瓦礫写真を元に制作されていて、
下の方に小さく”写真提供 朝日新聞社”の文字が見える通り、
朝日新聞社の報道写真を彼女が転用しています。

その「転用」こそが、彼女の作品においては重要なキーワードで、
転用をしながらも、独自の世界観がそこには描かれています。

知らない土地の写真や、有名な画家の作品の中にでも、
彼女は「実際に身を置く」という行為をしています。
そこから見える風景や匂いを感じながら、
彼女はその「続き」を描いていきます。

この作品は、2005年に震災復興10周年記念公募展として
開催された「兵庫国際絵画コンペティション」に出品され、
来館者の投票で選ばれる「県民賞」を見事受賞しました。

幹にぶら下がっているのは、段ボール。
「この木を残してやって下さい」と書かれ、
雨にぬれないようビニールまでかぶせられています。

書き主は、この家に住んでいたおばあさんのお子さんたち。
せめて大切にしていたハクモクレンだけは・・・という思いで、
守ろうとされたそうです。→詳しくはコチラ

おそらく、福田さんはこの話を人づてに聞いて
作品を描かれたのだと思います。
本当に美しい絵でした。

その後、兵庫県立美術館所蔵作品となったので、
現在でも常設展で見られます。

毎年、満開のハクモクレンを見るたび・・・というより、
かえって落葉した丸裸のハクモクレンの姿を見るたび、
この絵を思い出し、空想の世界で花を咲かせたりしています。

湖畔1

同じような構造で描かれているものは、他にも多くあります。
↑黒田清輝の代表作『湖畔』(1897)と、
↓福田さんの『湖畔』(1993)。

描画力ももちろんのこと、
背後には広々とした「続き」が拡がっていて、
あたかも彼女が見てきた風景のように感じさせられます。

湖畔2

そうそうそう!!と心の中でつぶやきつつ、
その視点が持てなかった自分に若干苛立ちを覚えながら、
彼女の才能にすっかり惚れてしまいました。

黒田が描いた実在の場所そのものは、私たちが見ている景色と
そう変わらないはずなのに、キャンバスのサイズでしか
世界を見ていなかった自分に驚いたりもしました。

その他にも、彼女が生み出す面白い作品は数多くあり、
同じような意図で作品を作っているアーティストもたくさんいますが、
今日はひとまず、ここまで。

興味のある方は、ぜひこの「続き」をご自身で探してみてくださいね。



追記−イズミさん&みなさんへも!

「開館20周年記念展
コピーの時代 −デュシャンからウォーホル、モリムラへ−」
2004.06.05−09.05
滋賀県立近代美術館
http://www.shiga-kinbi.jp/copy_age/index.html

5年以上前の展示ですが、まだ特設ページが残っています。
上の方のタブをクリックすると、詳細が見られます。

「展示室2」・「作品紹介」では、『湖畔』をはじめ、
名画とそのコピーが比較できるようになっていて、
そのどちらにも福田とモリムラが登場しています。
posted by クラタ at 20:41 | Comment(2) | TrackBack(0) | 植物のアート
この記事へのコメント
「ズレ」の話、大変興味深かったです。

ミヤマエさんがここで紹介しているズレは、もっと広義で捉えておられるのですが、「転用」は美術界でも良く使われる手段ですね。

そういえば、やきものでは「写し」と言いますね。写しはそのままそっくりに作るのではなくて、エッセンスを頂くというか、自分なりの解釈を加味しているような気がします。

以前、陶芸のモノクロ写真(たしか光琳の注器)を見て、一方向からの写真でわかる限りの形態を写して作ったことがあります。
絵付けもして焼きあがったものと、実物(恐れ多くも)を比較したら、上手下手でないところのズレが面白いだろうなーと思っています。

森村泰昌さんの人物画シリーズこそ、ズレを100%楽しめますね。絵画を、森村氏本人を含めた立体に置き換えて、再び写真に置き換えた作品で、結構なプロセスが潜んでますね。

伝言ゲームもズレを楽しむ遊びの一つかもしれないですね。

福田美蘭さんは福田繁雄さんの娘さんだったのですね。ちっとも知りませんでした。作品を見に行かなくちゃ!


また、こんなお話ができると面白いですね!
いずれ・・・
Posted by baumeイズミ at 2010 02 10 09:19
イズミさん

広義とは、物理的な「ズレ」ということですか??
それも含めたということ??

キャップのお話をしていて、福田さんが思い浮かんだ時は、
もちろん技巧的にも「ズレ」てはいるんですが、
むしろ感覚的なもの、「ズラシ」とでもいうような意識がありました。

イズミさんにも、「ズラ」すクセや趣向があるような気がして。
ただ、その微妙な違いをあえて説明するなら、
「写し」と「見立て」の差に近いかもしれません。

モリムラと福田さんは、おそらく当人同士も意識していただろうし、
周囲も関連付けて楽しもうとしたんだと思うんですが、
1992年に名古屋市美術館で二人展をされています。

「森村泰昌・福田美蘭によるスペイン風景画へのオマージュ」
というタイトルで、一緒に開催された
「スペイン・リアリズムの美〜静物画の世界〜」展の
作品を元に、描き下ろされたようです。

他にも、「コピー」がテーマのグループ展(追記へジャンプ!)で
二人が中心になって参加していたり、
一時期、特に近いところで接触されてたことはあったようです。

その「コピー」展でいうと、デュシャンのようなのが「見立て」で、
福田さんやモリムラは「写し」なのかなと。
元々あるものを転用するか、新しく作り直してみるかの違いで。

『ハクモクレン』なんかは、その中間の面白いところです。
やきもので言うと、呼続に近い??

私は、植物の鉢を新しく提案していくつもりにしていて、
まず「見立て」の方を先に始めたいなと思っています。
それと同時に、「ズラシた写し」をいろんな分野の作り手さんに
オーダーしていけたら最高かなーと…。

一方向からの写真…情報をあえて制限したまま写すのって、
かなり楽しそうな作業ですね!!
また実物もみせてもらいたいです。

あと、物理的なズレでいうと、名画を4色に分解して、
版ズレのようにわざとズラシた福田さんの作品なんかもあって!
って…あー、だんだん終わらなくなってきたので、
また写真見せますね!!

今度どっか旅でもしながら、ゆっくりお話したいです(笑)。
まずは、美術館デートでも♪
Posted by ミヤマエ at 2010 02 11 01:12
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